「コーデ提案して」がいつもイマイチな理由 — AIに上手に服を相談するコツ
「コーデ提案して」がいつもイマイチな理由 — AIに上手に服を相談するコツ
「コーデ提案して。」そう聞くと、AIはたいてい無難な答えを返してきます。無難ということは、誰にでも当てはまるけれど、自分にはしっくりこないということでもあります。問題はモデルの性能ではなく、質問の仕方にあったのです。

曖昧な質問が生み出す、無難な答え
プロのスタイリストに「何を着たらいいですか?」と尋ねたら、どうなるでしょうか。きっとすぐには答えず、こう聞き返してくるはずです。「どこに行かれるんですか?」と。
対話型レコメンドシステムの研究で繰り返し指摘されている課題も、まさにこの点にあります。ユーザーの入力は基本的に**情報が不足した状態(underspecified)**で届くため、不足している要素を聞き返すことこそがシステムの中核的な能力とされています。ユーザーが次の対話で意図を整理できるよう導くことまでが、システムの役割だというわけです。
しかし現状、多くのサービスは聞き返すことなくそのまま回答してしまいます。情報が足りなければ、足りないなりに平均的な提案を出すしかありません。そして私たちはその結果を見て、「AIってイマイチだな」と判断してしまうのです。
では、どのような情報を補えばよいのでしょうか?
優れたプロンプトの構成要素
ファッション推薦の研究によると、素材やフィット感といった具体的な属性、シルエットや雰囲気を伝える視覚情報、そしてキーとなるカラー情報が効果的であることが示されています。これをすべてのサービスにおける必須の公式とする必要はありませんが、質問を具体化するための実践的なチェックリストになります。
専門的な知見を日常の言葉に置き換えると、次の4つの要素に整理できます。
1. TPO:いつ、どこで、誰と。「明日の午前」と「土曜の夜」では、選ぶべき服はまったく異なります。
2. シルエット:何を主役にして組み合わせるか。「ネイビーのスラックスを中心に」と一言添えるだけで、候補は一気に半分に絞られます。
3. カラーの範囲:すべてを指定する必要はありません。除外したい色を1つ伝えるだけでも十分な効果があります。「白と黒以外」といった具合です。
4. ムード:どんな印象に見せたいか。「落ち着いた雰囲気で」「ラフだけどこなれ感のある感じで」。ここが抜けてしまうと、どこか味気ない仕上がりになってしまいます。
この4つを盛り込めば、たった2文でも質問の解像度がぐっと上がります。逆に必要な文脈が欠けていると、提案が平凡なものになりがちです。
しかし、プロンプトを工夫するだけでは解決しないケースもあります。
プロンプトの前に、まずデータ
AIが認識できるのは、登録されている服だけです。
クローゼットの半分しか登録されていなければ、どんなに素晴らしいプロンプトを入力しても、手持ちの半分の中からしか提案は生まれません。残りの半分にベストな組み合わせがあったとしても、AIはその存在を知らないからです。
さらに厄介なのは、タグが間違っている場合です。ニットが「ジャケット」として登録されていると、的確なプロンプトを入力しても**「正確に間違った答え」**が返ってきてしまいます。何も情報がないまま迷うよりも、かえって質の悪い状態です。
だからこそ、順番が大切です。まずは登録率を上げ、タグを一度見直し、その上でプロンプトを工夫する。この順序を飛ばしてしまうと、どんなに良い質問を投げかけても納得のいく結果は得られません。
準備が整ったら、実際に使えるプロンプトを組み立ててみましょう。
コピペして使える4つのプロンプト
シーン別にそのまま使えるテンプレートを用意しました。手持ちのアイテム名に合わせて書き換えるだけで使えます。
出勤
明日の午前はチーム会議、午後は社外ミーティング。オフィスカジュアル。
ネイビースラックスをメインに、ジャケットは必須。落ち着いたトーンで。
旅行
3月のローマ旅行。昼は18度、夜は9度。教会を2箇所訪れる予定なので、肩と膝が隠れる服装。
スーツケース1つ分、5日分のコーデ。
結婚式のお呼ばれ
土曜の夜の屋内ウェディング。白と黒はNG。
膝下丈で、手持ちのベージュのヒールに合わせる前提。
デート
金曜の夜、カジュアルなワインバーへ。あまり歩かない予定。
抜け感がありつつ、きちんとおしゃれした印象に。手持ちのレザージャケットを中心に。
どれも2〜3文のシンプルな構成ですが、TPO・シルエット・カラー・ムードがすべて過不足なく含まれています。
もう一文プラスするだけで、提案が変わる
ここからさらに一歩踏み込むテクニックがあります。
提案が出たあとに、**「どうしてこの組み合わせを選んだの?」**と聞いてみてください。理由を確認することで、自分が伝え忘れていた情報が見えてきます。たとえば「秋らしいトーンに合わせました」と返ってきたら、季節を指定していなかったためにAIが推測で補ったことがわかります。次のリクエストでそこを明示すれば、提案の精度はさらに高まります。
また、結果がしっくりこないときは**「除外する条件」**を追加してみましょう。「先週着た組み合わせは除外して」「トップスはニット以外で」といった引き算の指定は、足し算よりも新しいコーディネートの幅を大きく広げてくれます。
AclosetのAIスタイルでも、ぜひ上記のテンプレートをペーストして、アイテム名を入れ替えて試してみてください。気に入った提案はコーデとして保存し、次のリクエストでは除外条件や好みを少しずつ足していきましょう。
AIの理解力が足りなかったのではなく、私たちがうまく伝えていなかっただけなのです。
❓ よくある質問
Q: プロンプトは長ければ長いほどいいですか?
A: 長さよりも「文脈」が重要です。シーン・シルエット・カラー・ムードのチェックリストを参考に、必要な条件を2文程度で伝えるだけでも十分です。
Q: AIがいつも似たような組み合わせばかり提案してきます。
A: 除外条件をひとつ加えてみてください。「先週のコーデは除外」「この色は使わない」といった引き算の指定をすることで、新たな候補が見つかりやすくなります。
Q: AclosetのAIスタイルにはどうやってリクエストするのがおすすめですか?
A: この記事のテンプレートをそのままコピペして、アイテム名だけ書き換えてみてください。気に入った提案をコーデとして保存し、次回のリクエストで除外したい条件や好みをプラスしていくのがコツです。
参考文献・出典:
- ACM Computing Surveys, "A Survey on Conversational Recommender Systems"
- ACM Transactions on Intelligent Systems and Technology, "Analysing Utterances in LLM-Based User Simulation for Conversational Search"
- Fashion and Textiles (Springer), "LLM-generated content-based explanations for user experience in fashion recommender systems"
Aclosetマガジン編集部がお届けしました。